東京大学大学院の入試がオンラインによるPC利用型の試験に変更
新型コロナウイルスの影響でオンライン会議やオンライン授業に強制的に移行する状況になっていますが、入試においてもオンライン実施の動きがあるようです。
東京大学大学院の社会人向け教育プログラム「都市持続再生学コース」(東大まちづくり大学院)が5月22日に入試関係の変更スケジュールを発表しました。
発表によれば、「筆記・口述ともインターネット及びPCなどを利用しての実施を予定している。」とのことで、あくまで予定であるため詳細は不明ですが、入学試験における大きな潮流の変化に繋がるかもしれません。
日本と欧米の入学試験の持つ意味合いの微妙な違い
フランス、ドイツの例と日本を比べてみましょう。
例えば大学入試ですが、日本では高校卒業見込みの段階で各大学に願書を出し、各大学の試験に合格すると大学に入学することができます。
一方でフランスではバカロレア、ドイツではアビトゥアが高校卒業資格に該当し、この資格を持って一部の例外を除き大学に進学することが可能となります。
バカロレアやアビトゥアは取得するにあたり試験があり、全員が合格するわけではありません。
そのため、バカロレアやアビトゥアを所有しているということは高校までにしっかりと学力の基礎を築いてきたことを証明することになります。
一方、日本では高校卒業時にこれまでの学力を総ざらいするような資格試験は存在しないため、大学入試に対して受験生の高校までの学力を確認する意味合いが付与されることになるのです。
そうすると大学入試では教科書に出ている範囲の情報を聞く暗記型の問題がどうしても増えてしまいます。
入試のオンライン化がもたらす変化とは
入試がオンライン化されるということは、入試の在り方に大きな変化を与える可能性があります。
試験監督に監視された会場ではありませんので、入試問題を見た後にいくらでもPCやスマホを使って調べることが可能になります。
そうすると単に知識を聞くだけの問題は出題する意味が失われますので、入試問題から消えていくでしょう。
代わりにどんな問題が出題されるようになるでしょうか。
それはPCやスマホを使ってリサーチを行っても出てこないような新しい課題に向き合った時の対応力を問う問題です。
既に東京大学の学部の入試問題では、高校生が到底知らないような最近発見された古い資料などを示し、考察させる問題が出されていますが、これは思考力を試す問題です。
入試がオンライン化されるとこれに情報収集力が加わります。
インターネットを適切にリサーチし、考察に必要な情報を見極めながら収集し、論理的に組み立てて解答する、つまり入試において情報収集力×思考力で受験生の合否を判断することになるのです。
これからの時代、情報そのものの持つ意味はどんどん小さくなっていきます。
情報をただ知っているだけではインフォメーションですが、
それを自分で料理して武器として使える状態にしたものをインテリジェンスと言います。
インテリジェンスを作り上げる能力こそが情報化が極度に進行した社会で求められる能力です。
入試が変わればそれまでの教育も変わります。
現在は社会人向け大学院入試というごく一部に過ぎませんが、もしかしたらこれがきっかけとなって他の入試などにも広がっていけば、教育全体に大きな変化をもたらすかもしれません。
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